ギフテッド教育のパイオニアでもあり、すべての子のための才能教育、個別化・個性化教育「SEM(全校拡充モデル)」を開発された、アメリカコネチカット大学のジョセフ・レンズーリ教授、サリー・リース教授に続き、デル・シグリー教授のインタビュー動画を公開します。
先生方へのインタビューの【最終回】となります。
レンズーリ先生、リース先生の動画公開の記事はこちら
デル先生は、米国コネチカット大学教授であり、元NACG会長で、国立才能教育研究センター所長でもいらっしゃいます。
デル先生は、
「好き」の追求と苦手の克服についての考え方
興味関心が移りやすい子どもの姿
SEMのタイプ3がなぜ効果があるのか
アンダーアチーブメント(低達成)の要因
などについて、それぞれの専門家の言葉も引用しながら、具体的な例とともに、
親ができることはなにか
という視点で、丁寧にお話しくださっています。
印象に残ったシグリー先生の言葉
特に印象に残ったシグリー先生の言葉をピックアップしてみます。
「英知とは 自分の弱点を知り 自分の強みを知り 強みを生かして弱点を補う方法を見つけることだ」 「子どもは そのうちのいくつかに 興味を持ち 興味を失い ほかのものに移りますが それはそれで構いません」 「興味関心を軽く見ては絶対にいけません」
教師として現場に立たれていたご経験、研究者としての知見、また保護者の立場など、さまざまな角度からお話しくださっていて、どの言葉も実感を伴った、現実的でありかつ希望のあるメッセージだと感じました。
ぜひ、みなさまも、直にシグリー先生の思いを受け取っていただければと思います。
【タイムテーブル】
オープニング
レンズーリ先生とご挨拶
シグリー先生ご登場
「好き」を追求するだけで、苦手なことは克服できるのか
・親ができることは?
・苦手を克服するとは?
「才能」を育てる3種類の先生
好きなことへの熱中と移りやすい興味関心、タスクコミットメントについて
タイプ3がなぜ効果があるのか
松村先生からのご質問
「米国における才能児のためのインクルーシブ教育の今後の動向は?」
「才能」にまつわる多様な視点からのアプローチ
アンダーアチーブメント(低達成)に関する3つの要素
シグリー先生の思い
IQの考え方
高知能やギフテッドかもしれない子どもにヘルプは必要か
未来の、日本からのUConn大学院生にメッセージ
おまけ!
「好き」との向き合い方
「好きであること」と「やり切ること」は分けてもいいというシグリー先生の言葉は、心を軽くしてくれるものになるかもしれません。
「すぐやめちゃうなら、そんなに好きじゃなかったんだね」と考える方もいらっしゃるようですが、「やり続けること」「やり切ること」を好きのバロメーターにする必要はないし、好きじゃなかったらやる資格がない、というわけでもないでしょう。
私たちは、「好き」で自分をしばることはないのだと思います。
「好き」を"生かす"とは、自分の「好き」と、自分の好きなように向き合うということではないでしょうか。
親は、子どもの迷いやもどかしさに付き合いながら、長〜い目で見守るのが主な仕事のように思います。
「減点主義」から「加点主義へ」
また、シグリー先生はこうもおっしゃっています。
「減点主義」ではなく「加点主義」にならねば と。
アメリカで研究・実践をされているシグリー先生から、この言葉が出ることは、とても興味深いと思いました。
アメリカの方が、日本よりは「加点主義」な印象があるからです。
日本は、より一層の「減点主義」的だなあと感じることが、ままあります。
評価を得るために、「どうしたら減点されないか」を子どもたちは考えながら、学校で過ごしたり、受験に立ち向かったりしています。
また、保護者の方は、「減点を免除してもらうための配慮」を学校にしてもらいたい、と考えてしまうこともあるでしょう。
そして、「加点」をすることは、「特別扱い」「ずるい」ことだと思われがちです。
日本で、「標準」からはずれた子どもたちが生きづらいのは、日本の教育が「減点主義」を基本としているからだと思います。
そして、このしんどさは、「標準」とまとめられがちな、多くの子どもたちにとっても、同じことです。
失敗しないように、「×」がつかないように、とふるまうのは、誰にとってもしんどいことだと思いますし、子どもたちの「我慢」で成り立たせるような学びの場は、健全なシステムとは言えません。
変わるべきは、日本の教育の価値観であり、学校です。
今の学校制度、教室の姿を維持したまま、はずれた子どもたちだけに特別なケアを、という考え方は、インクルーシブの理念にも則っていません。
インクルーシブの理念は、「みなで同じことを同じように」という「同調」を助長するものではないことは言うまでもありません。
前回のリース先生の動画にあるような「個別最適」であることが大前提です。
そして、学習効果の有無や効率性の議論とは次元の違う、人の権利の話であることも忘れてはいけないと思っています。
その意味で、レンズーリ先生のSEM、「すべての子のための才能伸長教育」は、新しい学校、未来の教育の姿、そのものだと思います。
今回のインタビューにあたって、レンズーリ先生、リース先生、シグリー先生には、貴重な時間をいただきました。
日本の子どもたち、保護者のみなさん、また、学校の先生方に、本当に心のこもった貴重なメッセージをくださったと思います。
海の向こうに、日本の子どもたち、親、教師のことをこんなに思ってくださっている方がいるというのは、とても、とても、心強いことです。
今回の動画・字幕作成にあたっては、関西大学名誉教授の松村暢隆先生に、専門家として用語や内容の確認にお骨折りいただきました。
この場を借りて、感謝申し上げます。
繰り返しになって恐縮ですが、この動画三部作が、ギフテッドの特性を持つお子さんやその保護者の方のみならず、日本の教育変革への大きな支えとなることを願ってやみません。
「どの子が優先的にサポートされるべきか」などという議論は、まさにナンセンスです。
すべての子どもの今と未来が幸せになるよう、すべての大人がそれぞれの得意を持ち寄り、力を合わせて、取り組んでいけたらいいなと思います。
(文責 上田志穂)
〜お知らせ〜
レンズーリ先生方が開発・実践されている「SEM」と理念を同じくした学び場を2023年2月よりスタートしています。
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