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おうちSEM実践記[1]*後編



SEM@home改め「おうちSEM」の『初』実践レポートの続きをお届けします。


「学びの個性尊重プロジェクト」が始動する前から、自己流で「おうちSEM」をされてきた、東京都にお住まいのBさんの実践記・後編です。



(前回までのお話)

Bさんは、「学校に行きたくない」「自分はなにもできない」など、お子さんから発せられる「苦しさ」に向き合い、「好き」から生まれる自然な学びで、お子さんのwell-beingを保ち、高めてこられました。

前回は、

【「おうちSEM」に出会う前まで(幼少期~小2)】

【知久さんの「おうちSEM」に出会う】

までのお話でした。→前編はこちら

続きをどうぞご覧ください。


 

【「おうちSEM」を意識した日々】


自己流ですが、「おうちSEM」を意識してとにかく子どもの「好き」をよく観察し、好きなものが変わるタイミングに図鑑や本を借りてきて、本人が気に入ったものを購入しました。よく見ていくと、わが子は好きな対象物が変化しても、品種や生息地などのデータを読み覚えるのが好きな様子でした。うさぎの品種図鑑、犬の動物図鑑は大ハマりして夢中になりほとんど覚えました。

遊びの面だけでなく、学校・家以外での居場所もさがし、生物の興味を学問的な知見・論理的思考から学べる生物教室をみつけ、月2回通い始めました。


ポケモンゲームに興味持った時は、ゲーム嫌いな私としては少し抵抗があったのですが、ポケモン図鑑と攻略本を与えると、種族値分析や数値を細かく調べ、わが子は夢中になりました。ゲームから刺激をうけた創作活動は、より面白いものになっていきました。オリジナルの動物キャラクターとゲーム構図をコピー用紙に描き、キャラクターやグッズを粘土で作り、RPGのようなストーリゲームを粘土人形とコピー用紙上に繰り広げられるようになりました。

すると面白いことに自分が作るゲームの中で、苦手な「漢字」を調べて使い始めました。初級コースに雪・岩・草・火・水、上級コースに戦・縄・数・知 などがあり、それぞれの漢字のイメージ動物人形がいて、バトルしてコインを貯めてグッズを買う….みたいな遊びです。ドリルを嫌がり全くやらない子が、自分から学び初めたのは嬉しい驚きでした。

また、時間管理を学ぶのにも、ゲームは役立ちました。ゲームは目や脳に刺激があるのでやりすぎは身体に悪いことを説明し、時間ルールを一緒に決めました。試行錯誤していますが、自分でタイマーをセットして自分で管理するようになりました。


知久さんの講演会でご説明があった、苦手なことも、「好き」を通すと学びの意欲が内側から出てくるという、SEMの効果を感じました。その姿をみて、「ああ、この子は大丈夫。自分がやりたいと思ったら苦手なことに取り組める」と実感しました。


わが子に変化がでてきた同じ頃に、わが子との会話・接し方を夫婦で見直しました。以前にSEMと同様「レジリエンス」を身に着けるための家庭教育法を見知っており、興味がありました。その中の一つに、「親が先回りして子どもの失敗する経験を奪わないようにする」というもの、つまり「自分で考えて行動。失敗も経験して自分で回避する力をつける」というものがありました。

わが子は幼少期にWISCさえも逃げ出すほど、極端に失敗を嫌い激しく反応してしまう子でしたので、親の私達は不本意にも先回りする癖がついていました。「失敗して負のスパイラルに陥らないように」するための声かけですが、逆にとらえると「失敗しないでほしい」というメッセージが入ってしまい、子どもに失敗はダメなものと伝わってしまうというのです。子どものうちに小さな失敗をたくさん経験してレジリエンスをつけておくことで、社会に出たときに大きな挫折も乗りこえられる人間になる…そういう考えの家庭教育法でした。


「先回りしない」ただそれだけのことでも、極端に繊細で激しいわが子の場合、難しかったのです。でも、SEMの効果で「ああ、この子は大丈夫。」と実感できたことで、きっと自分でなんとかできるだろうと意識に変化がでて、声かけをやめていけるようになります。すると、わが子が些細な事で挫折した時、負のスパイラルに陥る時間がだんだん短くなっていきました。

ある時、あまりに激しく布団の中で泣き叫ぶ時があり、思わず声をかけてしまったのですが、本人から「今、気持ちを変えようと頑張っているの。待って。」と言われ、数分後に気持ち切り替えた顔で布団からでてきて話しかけてきました。自分なりの回避方法を一つ一つ見つけている様子で、成長を感じました。

「おうちSEM」を自己流でもすすめることで、子どもに変化が見え、その変化をうけて親の私も変わることができ、「レジリエンス」の面でも成長が見え始めたのです。



【「おうちSEM」の2年後(小4)】


次の目標は「発表する」でした。Type3に進みたくても本人がやりたい事しかやらないので「プロ意識をもってコミットさせる」というところに、どのようにつなげればいいか方法が見つけられずにいました。

わが子は、手のひらサイズの粘土人形を大量作成するだけで満足しています。キャラクター粘土に関しては家族以外に見せようとしませんでした。彼の深掘りした知識を理解してくれる人はいない、わからない人に評価されたくないと思っている様子でした。でも、SEMで「好き」だけで終わらせずその先へ行く大切さを知り、なにかできることからやってみようと思い、私がわが子の創作記録としてInstagramに作品を載せ始めました。


すると、知らない人、しかも外国の方から「いいね」がもらえるようになり、わが子は人に「評価される」経験を少しだけ体験できました。しかも、自分では高評価を期待していたものが「いいね」が少なかったり、逆に期待していなかったものが「いいね」が多かったりと、他人と自分では評価が一致しないことを体験します。また、他クリエーターの作品を自分が評価するようになり、評価の目には「良い・悪い」だけでなくその人の「好みか否か」が判断基準にあることも体験します。自分の作品が好みな人は、高評価してくれる。低評価でも好みが合わないだけ、そういうものだということをInstagram通して体験しました。世界各国・異年齢からの好みの合う人が「いいね」してくれるので、彼の自信にもつながったと思います。


その自信が少しついたところで、わが子が追及する世界に関連するテレビ番組があったので、粘土人形を応募してみました。するとスタッフさんがわが子のキャラクターと彼の人形をとても気に入ってくださり、タレントさんたちの前で粘土人形創作の姿を披露することになりました。出演が決まり、準備の段階では大人の事情でわが子の思い通りにならないこともあり、小さなことで挫折してすべてを投げ出してしまうのではないかとハラハラしました。

でも私の中でSEM Type3「プロ意識をもって」というのが少し頭にあるせいか、「番組スタッフさんたちはプロだからね、こういうこともあるよね」という表現などを使い、プロと関わっている事を意識させる助言をするようにしていました。すると、好きなことがベースなのと「プロの世界」であることを理解したのか、細かいことは堪えて撮影本番はびっくりするほどしっかりと、1人で4人のタレントさんと会話し、トラブルがあっても冷静に対応していました。角谷先生の「合わない環境では我慢を学べないけど、合う環境では我慢を学ぶことができる」という言葉が思い出されました。


番組が放送されて、周囲の反響は大きかったのですが、本人はTV出演に関しては割と冷静で、周囲に騒がれるのは嫌そうでした。でも、彼の深掘りした知識やスキルを高評価していただけた経験はかけがえのない財産になったようです。1か月後ぐらいに、「TVでてからなんかオレ変わった気がする。なんていうか、自信がついたというか。」と話してくれました。

そのあたりから、学校で少し嫌なことがあっても簡単には休まなくなり、好みが合うお友だちと積極的に遊び、好みが合わないお友だちはさらりと流せるようにもなっているようでした。

小4の夏休みは自分で計画立てて学校のドリル宿題をやり、2学期は初日から元気に登校・学級委員にもチャレンジ、宿題も毎日しています。もちろん学校が嫌な日もありますが「今日は楽しかったよ」と教えてくれる日もあります。2年前「学校行くなら死にたい」と毎晩泣き続きけていたのが噓のようです。親の私もびっくりするほどの成長を見せ、「いろいろ乗り越えて発表する」という経験は、期待以上の成長につながる、「おうちSEM」の効果だと感じました。


SEMはGT教育(Gifted and Talented教育)の教員が学ぶスキルですが、「おうちSEM」は保護者がファシリテーターになるので、ちゃんとしたプログラムを理解しつつも、柔軟に子どもに合わせて工夫ができるのがいいところと実感しました。わが家の場合だからかもしれませんが、親子なのでどうしても授業のようにキチっとできないこともあります。そこを少し緩く構えつつ、親の頭の中ではプログラムに合わせられるように会話を導いていくだけでも効果がでました。

Type3に進むのは程遠いと思っていたのですが、こんな形で自信をつけていけば「プロのように」やりたいと意識付けできそうな気がしました。また動物を通して自然破壊・環境問題にも興味を持つようになったので、少しずつ社会貢献につながるような活動と発表を、自分一人でできるようにしていくのを、今後の目標にしていきたいと思います。



【最後に】


繰り返しますが、わが子は数値もでていなければ、ハイリーでもなく親の自分の感覚だけを信じて「ギフテッド寄りの子」として接しています。つまり、ギフテッドでないかもしれません。ということはギフテッドであろうとなかろうと、すべての子に「おうちSEM」は有効なのだろうと思いました。特に、学校教育で評価されにくく、自尊心が低下してしまう子には、好きをベースに探求し才能につなげていく「おうちSEM」はお勧めだと思います。

わが子もまだ成長過程で、この先節目ごとに挫折を経験し、不登校になったり、困りごとが出る時があるだろうと思ってます。引き続き「好き」を通した学びと、成長に合わせた親の接し方を模索しながら、わが子の個性に合った教育を目指して、子育てを愉しんでいこうと思います。


 

Bさん、大変貴重なレポートをありがとうございまし

「学びの個性尊重プロジェクト」では、学びの迷子になってしまったお子さんやもっともっと自分の学びを進めたいお子さんとご家庭を、応援し、ともに学びの過程を楽しんでいきたいと思っています。

「おうちSEM」について興味を持たれた方、よろしければこちらのページをご覧ください。



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