今回は、SEM@home改め「おうちSEM」の『初』実践レポートをご紹介します。
「学びの個性尊重プロジェクト」が始動する前から、自己流で「おうちSEM」をされてきた、東京都にお住まいのBさんの実践記です。
Bさんは、「学校に行きたくない」「自分はなにもできない」など、お子さんから発せられる「苦しさ」に向き合い、「好き」から生まれる自然な学びで、お子さんのwell-beingを保ち、高めてこられました。今も、「学びの個性尊重プロジェクト」のサポートを利用しながら「おうちSEM」を続けていらっしゃいます。
とても詳細ですばらしいレポートを、こうしてシェアしてくださったことに感謝します。
前編、後編の2回に分けてお届けします。
どうぞ、じっくりと味わっていただければと思います。
東京都在住のBと申します。わが家が取り組んだ「おうちSEM」のこれまでをまとめてみました。
私たち親子の実践が、どなたかの学びのヒントになれば幸いです。
わが子は幼少期の頃から、野生動物・絶滅危惧種・恐竜・昆虫・ポケモン好きで図鑑が愛読書、好きな事追求型の小4男児です。創作好きで、図鑑・本・動物園・ゲームと様々なものからインスピレーションを受けると、絵・折紙・粘土で創作したくなる子です。
【「おうちSEM」に出会う前まで(幼少期~小2)】
私はフルタイム勤務でしたので、息子は3歳までは保育園、4歳からはこども園(幼稚園時間前後に延長保育がある園)に通っていました。こだわりが強く、例えばしりとりで「トラ」と答えると「トラなんていう動物はいません!ただしくはアムールトラかシベリアトラかベンガルトラです!」とダメ出ししてきます。
他のお子さんにとってはどうでもいいことにこだわるので集団が苦手。納得いかないと逃げ回り、先生を困らせる事が続き、園からこども支援センターに相談を勧められました。
腑に落ちない悲しい気持ちになりましたが、「わが子が救われる方法が見つかるなら、専門家の話を聞きたい。どんな経験も無駄にはならないはず。」という主人の言葉が後押しし、区のセンターで診察してもらいました。
小児臨床心理士からは、「発達障害ではないが、大人びたところがあり、語彙力もあるが精神面は幼い発達凸凹がある子」と言われました。念のため就学前にWISCを受けることにしましたが、本人は失敗や出来ないことを見られることを極度に嫌がり、わざと逆の答えを言い逃げ出そうとして、正しい数値は出せませんでした。
集団生活を学ぶために通ったお教室では、療育のカウンセラーも「明らかに理解して意図的に困らせている、賢い子だ」とのこと。
「お母さん、きっと学校はつまらなくて行けなくなる時がありますよ。でも無理しないで。嫌がるのを行かせようとすると逆効果です。行かなくなるのも挫折感が強く本人つらくなります。細々とでいいから通えればいいんです。」
と言われていました。
そんな経緯から、いつか行き渋りするだろうと心づもりしつつ公立小学校に入学。小1は学校嫌いではあるものの皆勤で登校できました。でもいろいろなストレスを抱え、小2の10月に、あるトラブルきっかけに行けなくなりました。
その時期、わが子は自分の得意分野で評価される場所がない学校で自尊心を失い、自分は何もできない、生物の知識なんてなんの価値もない、学校行くなら死にたいと毎晩泣き叫び、休んだら休んだで挫折感がでて、本当は行きたいんだと泣いていました。
学校の学習が苦手ですが、算数で長さの単元を学ぶと、図鑑で品種別に恐竜の体長を調べて、コピー用紙4枚つなげた紙に体長順に恐竜を描いたりしていました。
家では「学ぶこと」は嫌いではなさそうに見えるのですが、学校での漢字テストは100点中15点。どうせオレは何やっても駄目だと言います。わが子の集団生活の不器用さが歯がゆく思える日々でした。
【知久さんの「おうちSEM」に出会う】
就学前の困り事とこだわりの強い特性から、「ギフテッド応援隊」のサイトにたどり着いて読み込んでいましたが、該当する項目が多いと感じつつも、WISC数値は出てないですし、こだわりは強いものの「天才」と感じる能力があるわけではないので、わが子をギフテッド と思う自信がありませんでした。
小2で学校に行けなくなったとき、改めてギフテッドの概念が気になり、学びたいと思っていたタイミングで、応援隊が主催する知久麻衣さんの「今こそ知っておきたいギフテッド基礎知識&家庭で実践できるSEM(全校拡充モデル)」という講演会が名古屋であることを知り、東京から名古屋まで行きました。
自分でも不思議なほど行動力がでて、導かれていたような気持ちさえします。講演会は、私が期待する以上の情報が盛りだくさんで、自分の悩み事が突破されるような嬉しい衝撃を受けました。
知久さんの講演会では、前半はギフテッドという概念の基礎知識を学べ、ギフテッド≠天才、ギフテッドチャイルドとは、同年代の子達と比べ明らかに高いポテンシャルが一つ以上の領域でみとめられ、それに見合った配慮や適切な環境にいないと困り事や問題行動が出てしまう生徒、ということを改めて学び、わが子はその部類になると思いました。
また後半で心理学と教育学との視点の違いのご説明とともに、アカデミックギフテッドとクリエイティブギフテッドがあること、レンズーリ教授がクリエイティブギフテッドに着目したSEM(「好き」を探求し「才能」にまで伸ばすための才能伸長教育)という学びがあることを知り、学び方の道筋が見えたような気がしました。
たぶんこだわりが強いお子さんの親御さんであればご理解いただけると思うのですが、子どもの好きなことに寄り添う活動は「子どもの良いところを伸ばしたい」という素敵な理由もありますが、「好きなことに寄り添わないと子どもが荒れて大変だから」というところもあります。
わが家は、真夏の猛暑日もプールは拒否して動物園。北海道3泊4日旅行なら4日連続旭山動物園通い。帰宅すると寝る暇も惜しんで、ひたすら創作と同じ会話と同じ遊び付き合わされ、とにかく相手をするのも苦労が多かったです。
でも、講演会で拝聴してから、この毎日が「SEM Type1、2」につながっている、これでいいんだと自信になり、「Type3」のプロ意識をもって活動し発表、できれば社会貢献につながる達成感を目指すという、「好き」の先を目指す、次の目標が見えてきました。
SEMの存在を知ることで、まず親の私が「日々の苦労」と「将来の不安」ばかりだった毎日から、「日々の成長」と「将来の目標」を見る毎日に変化しました。SEMを知っていると知らないでは、同じ生活でも大きく違いました。
講演会でご紹介されていた「わが子がギフテッドかもしれないと思ったら」と「ギフテッドその誤診と重複診断」を即購入し、それらはその後の私の支えになりました。数値が出ていようといまいと、親の自分の感覚を信じて「ギフテッド寄りの子」と接していくようになると、いろいろな困り事が落ち着きはじめ、学校は五月雨ですが登校できるようになりました。
学校に行ければそれなりに楽しんでいて、先生から見ると休む理由が分からないほどです。家でもお友だちの事や授業の話題が出るようになりました。それでも、本人は周囲に合わせたり、時間通りに動いたりする集団生活に疲れてしまい、なにかと自信がなく、小さなことで挫折して家に閉じこもり泣き叫ぶ日がありました。その姿をみて、わが子に大切なのは「レジリエンス」。嫌なことをはねのける力をつけるために、知久さんから学んだ「おうちSEM」の学びが必要だと改めて思うようになりました。
後編では、「おうちSEM」の具体的な取り組みについてお話しいただきます。
「おうちSEM」についてはこちらのページをご覧ください。