「なぜギフテッドをとりあげるのですか?」
「この活動はギフテッドのための活動ですか?」
そういったご質問をいただくことがありますので、本日はそのあたりのことを、少しお話ししようと思います。
*なぜ「ギフテッド」をとりあげるのか?
それはまず、ギフテッドの特性を持つ子どもがマイノリティであり、かつ、スルーされがちな存在だからです。
“すべての子ども”
と言うとき、当然そこにはマイノリティもふくまれるはずです。
“個性を尊重しましょう”
と言うとき、それはどんな個性であっても、例えば、際立った個性であっても、尊重されてしかるべきです。
走るのが速い子、スポーツが得意な子、歌が上手な子、絵が上手な子、と同様に、もともと知的能力が高い子、という子もいるわけです。
ですが、どうも知的能力の高い子は、それゆえの困り感を持っていても取り合ってもらえなかったり、ひたすら待たされたり、逆に、発言の多さや理解の早さから教室内でじゃまもの扱いされてしまったりしがちです。
速く走れる子は、
「速く走り過ぎると場を乱すから、ほどほどに走って」
とは言われないのに、です。
ギフテッド ”を” 特別に取り上げてください、というよりは、ギフテッド ”も” 、多様な個性の一つとして、また、普通の一個人として認めませんか?、そういう気持ちを持っています。
また、ギフテッドの特性への教育的な対応、教室内での”工夫”は、他の大勢の子どもたちにもプラスになると思います。
ギフテッドの特性を持った子どもは確かに、「標準」に設定されている枠からはみ出しやすいです。
だからこそ、そのはみ出しを見て、
これまで
”普通”
や、あるいは、
”そういうものだ、しかたない”
と思っていたことが、実はそうじゃないと気づくきっかけになるのではないでしょうか。
例えば、宿題。
その宿題はその子にとって本当に意味のある、ちょうどいいものなのか、
子ども一人ひとりの理解の”穴"を見つけフォローし、さらに伸ばすための最良の質と量になっているのか、
そんなことを考える機会にできると思います。
また、一人のニーズに応えようとすることが、全体の幸福度の向上につながるケースも多々あります。
白い紙だとチカチカして見えにくいという子がいるなら、希望者は ”全員” 色つきの紙を使えばいいと思います。
本当にどの色の紙が見やすいのか、子ども自身がやってみて判断するでしょう。
白い紙より見やすいことに、この時気づく子どももいるかもしれません。
そういう子は、自分でも気づけていなかったちょっとしたストレスから解放され、学びやすい環境を手に入れたということになるのです。
*ギフテッド教育の可能性・発展性をすべての子どもに
主にアメリカで発展してきた「ギフテッド教育」は、ギフテッド教育が抱えてきた課題、また、ギフテッド教育がもたらした効果をふまえて、変遷・発展してきています。
「ギフテッド教育」がもっぱらその主軸としてきた才能教育には、いわゆる飛び級【早修】や、深掘りする【拡充】、また一人ひとりに合わせた【個別化・個性化教育】などがあります。(知久麻衣氏講演動画より。用語に関しては初出は松村暢隆先生。)
いずれも、進度や深度が柔軟で、一人ひとりの学びの個性を尊重し、ポテンシャルをよりよく伸ばすために取り入れられた方法です。
この発想、ここ最近、文科省や経産省が唱えている「個別最適化」と通じるものがあります。
特に【拡充】は、昨今ニーズが高まっている「探求学習」をさらにブラッシュアップできそうです。
また、文科省が1月26日に出した中教審の答申では、「補充的・発展的な学習指導」の項目で「ギフテッド教育」が取り上げられています。
日本でも、遅ればせながらかもしれませんが、「全ての子供たちの可能性を引き出す」ための教育を推し進める動きになっていると感じます。
「ギフテッド教育」については、才能をどう定義するのかなどの課題もあるでしょう。
未来人である子どもの能力や才能を、大人が見極められるのだろうか、
新しいもの、新しい発想に大人は気づけないかも…
とも思います。
ですから、
どの子にも大人が気づかない才能のタネがある
と考え、
そのタネを潰さないよう育つ環境を整えること
が、大人のできることだと思うのです。
ギフテッド教育から発展してきた、個別化・個性化教育を知ることは、マイノリティ・マジョリティの垣根をなくした、一人ひとりに合った教育へのヒントになると思います。
ギフテッドという概念を知ること、ギフテッド教育・才能教育という方法論 "から" すべての子どもにプラスになるものを生み出せる。
学びの個性尊重プロジェクトでは、そう考えます。
今後は、オルタナティブスクール、ホームエデュケーションという、いわゆる学校外での学びや、学び方の違う(Learning Differences)という見方からのLDについても、考えていけたらいいなとも思っています。
現在は、こちらの講演動画を公開中です。
一緒に考えてみませんか?
***
2022年無料再配信中