第2回講演会のQ&Aセッションに寄せられた質問と回答のご紹介その3です。
【「好き」が広く浅く、タスクコミットメントにも不安があります】
とくに低年齢のうちは、好奇心も広く浅く旺盛なのが一般的だと経験上思います。
そうでない子ももちろんいますが、いろんなことを体験したい子は珍しくないですし、「好き」が定まっていなくても全然大丈夫ですよ。 成長してきてからも、「これだ!というものがないからどうしよう」という声をよく聞きますが、SEMに関係ない話であれば、興味が広く浅くても、元気で楽しく健やかに成長できているなら問題はまったくない、と私は思っています。 例えばですが、私たち家族は3人とも興味関心ごとが逆に異常に狭いので、「好き」が定まってないと、体調不良を起こしたり鬱になったりしてしまいます。
ですので息子の子育てに関しては、「好き」を見極めて深めることが健康面でも非常に重要でした。
「好き」さえあれば、ほかの辛いことをなんとか乗り越えていけました。今のところは、ですが。 体調不良を起こさないのであれば、「好き」が広いというのもその子の個性ですから、無理に「好き」を絞らなくていいと思います。
「好き」を見つけることがプレッシャーになってしまうこともあります。 息子にも「好き」を失った時期がありました。無気力・無関心・無感情で鬱々とした日々が続きました。
恐ろしくなった私は「好き探し」を押しつけたというか、一緒に「好き」を探そうと励まし続けました。
でも、あとで聞いたら、じつは凄いプレッシャーで、「好き」がない自分はダメ人間だと余計に落ち込んでしまったんだそうです。 ですので、その子の気質や時期というのもあると思います。
レンズーリ教授のAtom Diagramがまさにそれで、タイミングや時期、周りの環境やその子本人の段階、というのがあるので、今「好き」がないからと焦らなくても全然大丈夫だと思いますよ。 もちろん、「好き」に気づけてない、という場合もあるかもしれません。 子どもの「好き」に親子それぞれで気づくためにも、Type 1は効果的です。
あと、普段の言動観察はかなり有効だと思います。
小さい頃に好きだった遊びや本とか、ゲームでも、なんでも、そういうものを思い出し、その傾向なり共通点を探ってみてください。 私も50年近く生きてきて、途中、とくに大学時代にはあれこれ手を出しもしましたが、続けても全然苦にならないもの、努力すら楽しいもの、時間があれば自然と行なっているものって、結局、自分の記憶がある3歳頃から変わってないことに、子育てをしていて気づきました。
皆が皆そうではないかもしれませんが、普段あたりまえのようにやっているなかに、気づいてない「好き」が、じつは目の前にあるかもしれません。
例えばどんなに忙しくても、ささやかでも美味しいものを作ったり食べに行く時間をあえて作っている人は、食べることが「好き」ですよね。
私は、忙しくなればなるほど生存のためだけに食物を口にしていますから、食に関してはあまり興味ないことがわかります。 又、「いろいろ試しても続かない」というのもよく耳にしますが、続かないということは、とりあえず今はそれを「続けたいと思えるほど好きではない」のだと思います。
一旦保留にしてみるのも手でありましょう。
もしかして、ですが、次から次へとType 1的な刺激にさらされ、脳が刺激慣れしてしまってるのかもしれません。
2e教育の第一人者であるスーザン・バーム教授によると、忙しさは思考力や創造性を機能停止させてしまうそうですから、「何もない時間」というのをあえて設け、自分で考える力、見つめ直す力、見極める力、つくり出す力の伸長機会にしてみても良いと思います。
その子の本当の「好き」が、もしくは「好きじゃない」が、退屈のなかで明らかになるかもしれません。 好きじゃなかったのに大人になってから好きになった、という例もあります。
それは、当時の環境やタイミングが悪かったからかもしれません。
例えば、当時は習い事として押しつけられてイヤだった、先生が怖かった、練習が嫌いだった、練習は楽しかったけど発表会が辛かった、そこにいる子たちにじつは仲間はずれ等されていて苦痛だった、などなど、いろいろあるでしょう。
そういうものが消えたとき、初めて「新たに始めたいな」と思うものもあります。
これもレンズーリ教授のAtom Diagramで説明できると思います。
そのものが嫌いじゃなくても、環境やタイミングで、嫌い、とか、好きじゃない、と思い込んでいる場合もあるということです。 言動を観察したり、過去や日常を改めて見つめ直す、という行為も、Type 1などの拡充体験とは違いますが、「好き」を見出す方法の一つとして有効だと私は思っています。
次回はFAQシリーズの最後になります。よろしくお願いいたします。
(Mai C)
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