1月9日、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議 教育・人材育成ワーキンググループ「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージの中間まとめ」について語る会を開催しました。
16日まで意見募集をしているとのことで、みなさんで資料を読み解き、一人でも多くの方が「意見を送ってみようかな」と思えるような機会を作ろう!と急遽思い立ったのでした。
一緒に語り合えたらいいなあと思う方にお声がけ。
多様な学びプロジェクトの生駒さんが、共同開催にしましょうと提案してくださったこともあり、開催の3日前くらいに声をかけたに関わらず、なんと、100名以上の方が申し込んでくださいました。
お話聞いてみたいなあと思っていた方からもお申し込みいただき、コメントをいただくスピーカーも5人となりました。
ギフテッド応援隊の松下さん、元教員でHILLOCK校長の蓑手さん、才能はみだしっ子の育て方著者の酒井さん、SPACE JUNKの山下さん、そして、多様な学びプロジェクトの生駒さんです。(登壇順)
まず、この内閣府の中間まとめをがどんな作りになっているかを、私、上田が少しナビゲートしました。
最初の【0】がこの政策の大事したいと思っているところ、次の【1】が子どもを取り巻く現状、そのあとの【2】が今後の方向性、そして、【3】そのための政策イメージとなっていたかと思います。
今回の意見募集は、政策実現に向けての具体的なロードマップを作成するためのもの、という位置付けです。
政策は、限定的な価値観の中で能力があるものが成功するという社会ではなく、「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)」 が実現できる社会が、中核に置かれているとのことでした。
「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)」というのは、だれかと比べて優劣や良し悪しが決まるのではない、「それぞれの幸せ」ということでしょうか。
これがただのお題目ではなく、本気で実現されるなら、とても素晴らしいことだと思います。
以下、各スピーカーの方のご意見を簡単にまとめます。( )内は、関連する「中間まとめ」のページです。
ギフテッド応援隊の松下さんは、ギフテッドの特性を持つお子さんの保護者という視点に加えて、大きな企業での社会経験から見た、「中間まとめ」と現実とのギャップと、多くの方が自分のこととして捉えるための工夫についてお話しくださいました。(全体, p10,23)
この春オルタナティブスクールのHILLOCKを開講される蓑手さんは、元小学校教員の視点をフルに生かしたお話しをしてくださり、現場の先生はこうした資料のことや動きをそもそも知らないだろうということと、その背景にある学校システムや環境の要因などを、分かりやすく伝えてくださいました。(全体, P14)
才能はみだしっ子の酒井さんは、多くの課題が盛り込まれている中、子どもたちが、受け身的にこれらの変革に出会うのではなく、当事者、主体者として関われるようなアプローチの必要性についてお話しくださった点が印象的でした。(p10,23,24,28)
東大先端研ROCKETの元保護者で作られたSPACE JUNKの山下さんは、「中間まとめ」で言及されている「データ」「学習ログ」について、これが無機的ではなく「生きている」情報であり、その子らしさであること、そして、学びのオーナーシップを子どもたちが手にするためのものとなってほしいという希望をお話しくださいました。(全体, p24)
多様な学びプロジェクトの生駒さんは、たゆみなく「不登校」の問題に向き合い続けていらっしゃるご経験から、「これからの教育」と不登校との関わりについて、データや歴史に根付いた説得力のあるお話しをしてくださいました。(全体, p11)
私が「中間まとめ」で気になった点の一つは、教室のイメージ図です。
内閣府「Society 5.0 の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ<中間まとめ>」P10
教室の多様性が分かりやすいイメージ図になっていますが、子どもは何かのカテゴリーに属するわけではありませんし、この図でグレーで示されている子がなにも特性や個性がないわけではないと思います。
むしろ、このグレーで表現されている、もしかしたら「標準」とされる子どもたちこそ、伝えにくい「困り感」や、あるいは表に出にくい「才能」を持っているかもしれない、とも思います。
子どもたち全員に、それぞれの「学びの個性」・教育ニーズがあるというイメージ図になると、私にも、あなたにも、彼にも、彼女にも、関係のある「これからの教育」になるのではないかなと思います。
また、多様な学び、オルタナティブな学びの場といった言葉が、今回の「中間まとめ」だけではなく、これまでの議論を通して、たびたび出てきますが、これを、教育基本法の「普通教育」として考えるのか、学校教育の補完的な位置付けで捉えるのか、その大前提の議論や共通理解もあるといいなとも思いました。
子どもの育ちはこれまでもこれからも、学校だけで閉じるものではないので、空間や時間といった話だけでなく、「なにをどのように学びたいか、学べているか」にも、個々それぞれの意思が尊重されるといいなと思います。
それぞれ、分野や背景の異なる方々のコメントは、「中間まとめ」の理解に奥行きをもたらしていただいたと思います。
参加者の方のチャットも、教員、保護者それぞれの立場からの率直なご意見で、どれもこれも考えを深めるのに参考になるものでした。
「教育を変えたい」「学校を変えたい」という思いが伝わるものが多く、悩みながら、迷いながらも希望を感じるひとときでもありました。
こうした声が、一つでも多く政府にも届き、市民・国民の思いを反映した政策になることを願います。
意見募集は2022年1月16日までなので、このブログを読まれた時点では、もう期日が過ぎている方もいるかもしれません。
ですが、この政策がどのように進んでいくのか、確実に自分たちの暮らしに関係するものとして、注目し続ける必要があるだろうと思います。
「おまかせ」というわけにはいかないですよね。
間に合う方、こちらから意見を送ってみてください。