低学年・初学者向けのフォニックスの教材で、おすすめのものはありますか?
ディスレクシアの傾向のある子も学びやすいものだと、なおありがたいです。
お悩みふんわり受けとめます
「悩んでいるけど、どこに相談すればいいか分からない」
そんなお声を耳にします。
十分なお力にはなれないかもしれませんが、少しでもなにかのヒントにしていただけたら…
そんな気持ちで「質問箱」を開設しました。
みなさまから多く寄せられた質問と、参考にしていただけたらいいなという回答を載せています。
回答は、子育て経験、オルタナティブ教育経験、大学院等で得た知見、支援教育専門士としての意見などをもとにしております。また、講演会の質疑応答でみなさまからいただいた情報もシェアさせていただいております。
「質問箱」は閲覧専用となっております。質問がある方は、こちらのアンケートフォームよりお願いします。
https://forms.gle/pe1pL7PNmvwMGtPT6
すべてのご質問に回答することは難しいことをご了承ください。
また、「正解」はなく、子ども一人ひとり、また、各ご家庭によって、状況は異なりますので、あくまで参考意見としてご覧いただきますよう、お願いいたします。
まずフォニックスとは、
英語の『文字(綴り)と音の関係』やその教授法・学習法
のことです。
英単語には、ある程度のルールがあり、このルールを覚えることで、「全てを丸暗記」ではなく、英語を習得していくことができます。
フォニックスには大きく分けて、
アナリティック・フォニックス
シンセティック・フォニックス
があります。
アナリティック・フォニックスは、
"知っている単語の中の音を、構成単位に分割して、文字と音の関係"を学びます。
アルファベット順に学び、文字の名前と音を同時に教えます。
例)
「『apple』『ant』に、『A』が入ってるね〜」
という具合に教える。
単語を知らなければ、「??」となる。
シンセティック・フォニックスは、
"構成単位である音(音素)の文字と綴りの関係を学んで、それらを結合して、単語を自分で読み書きする"ことを学びます。
例)「a」「n」「t」それぞれの「音」を学び、それをくっつけて、「ant」と読んでいく。
知らない単語も読めるが、意味はわからないので、意味のフォローは必要。
「学校でフォニックスを取りれています」といった場合、どちらのフォニックスなのかで、アプローチや培えるスキルは全く異なります。
日本ではこれまで、フォニックスというと、前者のアナリティック・フォニックスを指すことが多かったようです。
「フォニックス?覚えることが増えて大変」という経験をされた方は、アナリティック・フォニックスを学ばれたのかもしれません。
世界的には、シンセティック・フォニックスが主流になっています。
イギリスの教育省(文科省のようなところ)は積極的にシンセティック・フォニックスを推奨していて、イギリスの小学校1年生はシンセティック・フォニックスで「読み書き」を学びます。
そう、会話ができても、読み書きが当たり前のようにできるわけはなく、適した指導が必要なのです。
最近日本でも、「フォニックス大事だね」と言われるようになり、いろいろな教材や動画が出ているようですが、フォニックス学習で一番大事なのは、
単に、文字と音の関係を覚えるだけではなく、それを使うということができるか、です。
この点に注意して教材を選ぶのがいいと思います。
シンセティック・フォニックスの教材でおすすめなのは、ジョリーフォニックスです。
先ほどご紹介したイギリス教育省も、ジョリーフォニックスを参考にして指導書を作っています。
ジョリーフォニックス以外にもシンセティック・フォニックスの教材はあるようですので、好みや学び方にあったものを選んでいただくのがいいと思います。
そのうえで、ジョリーフォニックスのおすすめポイントは、シンセティック・フォニックスの肝である、
「学んだ文字と音を使う力・操作する力」が培えるようなプログラムになっている点、また、
「絵を見る、お話を聞く、体を動かす、歌を聞く」など、多感覚を用いた学習方法になっている点です。
この「多感覚を使う」学び方というのが、ディスレクシア傾向を持つ子どもたちにも有効な要素となります。
目で見て理解しやすいのか、耳で聞く方がすっと入ってきやすいのか、動きと一緒に覚えるのか、リズムや旋律が助けになるのか…、人によって得意な認知(情報処理)方法が異なるからです。
ジョリーフォニックスは、これらの感覚を全て取り入れているので、どれが得意か掴みきれていない子どもにも、なにかがヒットするという仕組みになっています。
ディスレクシアの活動の「先生」的存在である、認定NPO法人 EDGE(エッジ)も、ジョリーフォニックスのワークショップを定期的に開催しています。
この回答を書いています上田も、ジョリーフォニックスのトレーナーである山下桂代子先生も、ディスレクシア傾向の子どもたちが、ジョリーフォニックスで英語の読み書きができるようになるさまを間近で見ており、その効果を実感しています。
まずなにより楽しいですから、ぜひお試しいただけたらと思います。
ジョリーフォニックスを学ぶ方法としては、次のようなものがあります。
①日本語版のテキスト(先生用と生徒用の両方が必要)
はじめてのジョリーフォニックス ―ティーチャーズブック― ジョリーラーニング社
https://www.amazon.co.jp/dp/4487810310/ref=cm_sw_r_tw_dp_3NYMXVE0T5VFMV5HTP9B
@amazonJPより
②アプリ(まずは無料版から。フルバージョンは料金がかかります。)
↑のテキストと同じような流れで学べますが、英語版のみです。
Jolly Phonics Lessons(iOS版)
https://apps.apple.com/jp/app/jolly-phonics-lessons/id1149029299
Jolly Phonics Lessons(Android版)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.gilbertjolly.teachphonics.teachers&hl=ja&gl=US
③動画
ジョリーフォニックスを開発したJolly Learning社では、発音の動画やレッスンの紹介の動画は公開していますが、動画だけで学べるプログラムは無いようです。
シンセティック・フォニックスやジョリーフォニックスについて、もっと詳しく知りたい方は、山下桂代子先生のHPをご覧ください。
https://kayokoyamashita.com
(参考文献)
山下桂代子ジョリーフォニックス総合トレーニング 2019春、2020春配布資料
山下桂代子先生のホームページ
https://kayokoyamashita.com