「隠れディスレクシア」という言葉を聞きました。これはどういうものですか?ギフテッドの特性と関係がありますか?
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質問箱
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回答は、子育て経験、オルタナティブ教育経験、大学院等で得た知見、支援教育専門士としての意見などをもとにしております。また、講演会の質疑応答でみなさまからいただいた情報もシェアさせていただいております。
「質問箱」は閲覧専用となっております。質問がある方は、こちらのアンケートフォームよりお願いします。
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すべてのご質問に回答することは難しいことをご了承ください。
また、「正解」はなく、子ども一人ひとり、また、各ご家庭によって、状況は異なりますので、あくまで参考意見としてご覧いただきますよう、お願いいたします。
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まず、ディスレクシアというのは、音韻処理や音と文字のつながりがスムーズではなく、文字や文を読むことにつまずきや困難があることを言います。
読むことが難しいことから、書くことにも困難を持つ場合がありますが、読むことだけに困難がある人も多いようです。
全く読めないということはむしろ少なく、
・読みがたどたどしい
・読むことに時間がかかる
・言葉の入れ替えや語尾の取り違えなどの読み間違いが多い
・読めるが非常に疲れる
などが特徴的です。
視機能(視力、眼球運動、色覚)は、直接的な原因ではないようですが、視覚的な認知機能は関係しているようです。
視覚情報(聴覚情報もですが)の処理には、脳のいろんな部位が関係しており、経路も単純ではないので、これから解明されてくることもあるだろうと思います。
さて、「隠れディスレクシア」とは、
“ディスレクシアの読み問題を引き起こす視覚・聴覚的処理能力の欠陥を、高い次元の言語技術で埋め合わせている”
状態のことを言い、ギフテッドの特性がある子に多く見られるそうです。
ギフテッドの特性の有無に関わらず、私たちは文を読むときに、知っている言葉が多いほど、流暢に楽に読むことができます。
小さい子どもの読みがたどたどしいのは、文字情報を処理する能力が発達途上であることも原因ですが、語彙や概念知識が少ないことも理由になります。
卓越した言語能力や推論する力を持っている子は、それらを使って、文章の中の情報を手がかりに文脈を読み取り、難なく文章を読みます。
スラスラ読んでいるので、読めていると周りは(もしかしたら本人も)思いますが、それは、「まるで読んでいるかのように」見えるだけで、実は一言一句を正確に読んでいるわけではない、ということが起こっていることがあるそうです。
文脈を読み取れるなら支障は無いように思いますが、テストの設問文のような短い文では、手がかりになる情報量が少なすぎて、誤読を多発します。
学力テストは、一生涯続く学び全体からすると小さいこと、一時的なものと、私は思いますが、とはいえ、点数の低さは「がんばっても思ったような点数がとれない」と、自己効力感を下げることにつながりますし、よりよい学習環境を求めるために「点数」が必要になることもあると思います。
そう言った意味でも、「隠れディスレクシア」について知っておくことは、その子の学びにおいて気をつけるポイントや適切なサポートに有用かもしれません。
「隠れディスレクシア」は、小学校高学年、あるいは、英語学習が始まった時点で、それに気づくというパターンが多いようです。
これは、支援教育専門士の学修の際に学んだことですが、英語圏では、その言語の難しさから、LDの率が高いそうです。
ここでの難しさとは、音と文字の関係の複雑さのことです。
英語は音と文字の関係が単純ではないうえに、「例外」にあふれています。
ちょっと前のデータでざっくりですが、LDの人数比率は、イタリアでは1〜2%、日本で6〜7%、英語圏で10%以上だそうです。
脳の特性的に、イタリア人はLDになりにくく、英米人はなりやすいというわけではなく、イタリア語は音と文字の関係が単純で、英語は複雑といった理由で、英語圏の方がLDの率が高いのです。
そういう意味で、発達障害は「なにが標準なのか」によって変わる”障害”とも言えますね。
「隠れディスレクシア」についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ、「on dyslexia」のサイトをご覧ください。
「隠れディスレクシア」の記事の元文献は、「2e letters」に掲載された専門性の高い優れた記事のようで、profoundly gifted のためのNPOであるDavidsonにもアーカイブされています。
「隠れディスレクシア」
https://ondyslexia.blogspot.com/2012/03/stealth-dyslexia.html
「ディスレクシアであることの利点」
https://ondyslexia.blogspot.com/2013/03/blog-post_20.html
「ディスレクシアは例外から学ぶ」
https://ondyslexia.blogspot.com/2014/01/blog-post_17.html
という記事も、「脳の多様性」という示唆に飛んだ記事だと思います。