ギフテッドなどの特性がある子どもには、「環境調整」が必要だと聞きますが、「環境調整」とは、具体的にどのようなことを指しますか?
ギフテッド教育を受けるために、海外に移住するなど必要でしょうか?
お悩みふんわり受けとめます
「悩んでいるけど、どこに相談すればいいか分からない」
そんなお声を耳にします。
十分なお力にはなれないかもしれませんが、少しでもなにかのヒントにしていただけたら…
そんな気持ちで「質問箱」を開設しました。
みなさまから多く寄せられた質問と、参考にしていただけたらいいなという回答を載せています。
回答は、子育て経験、オルタナティブ教育経験、大学院等で得た知見、支援教育専門士としての意見などをもとにしております。また、講演会の質疑応答でみなさまからいただいた情報もシェアさせていただいております。
「質問箱」は閲覧専用となっております。質問がある方は、こちらのアンケートフォームよりお願いします。
https://forms.gle/pe1pL7PNmvwMGtPT6
すべてのご質問に回答することは難しいことをご了承ください。
また、「正解」はなく、子ども一人ひとり、また、各ご家庭によって、状況は異なりますので、あくまで参考意見としてご覧いただきますよう、お願いいたします。
「環境調整」とは、その人がなにか困難や困りごと、生きづらさなどを抱えている時に、「困ったこと」がそもそも起きにくいように、「環境」を「調整」することをいいます。
心理学の一つである応用行動分析学でよく用いられる考え方ですが、これに限らず、看護や福祉の分野でも、QOLを上げるために行われている手法のようです。
非常に簡単に言えば、個人が環境に合わせるのではなく、環境を個人に合わせていくことを言いますが、ここでいう「環境」とは、物理的に存在する「環境」だけではなく、人と人との関係性、量や内容の加減など、ソフト面も含みます。
ギフテッドを例に挙げますと、「環境調整が肝心です」と言われた時に、ギフテッド用の学校に行く、ということだけが環境調整ではありません。
学校などの「場所」だけではなく、子どもをとりまく状況や条件、働きかけも調整できる「環境」ということになります。
第1回講演会でお話しくださった角谷詩織先生も、
「ものすごく大きなことをしなくてはいけないとか、子どもを変えようとするのではなくて,子どもの不適切(に見える)行動の原因を取り除こうとする努力」
とおっしゃられており、
「日ごろの先生の言葉かけ,ちょっとした工夫」
も、適した環境に調整することになるとお話しくださいました。
例えば、「宿題をやらない」という「困りごと」があるとして、「どうやってやらせようか」と考えるのではなく、宿題の量を減らしたり、内容を考え直したりするといった環境調整の仕方が考えられます。
さらに言えば、「宿題を全員一律に出す」というところから考え直してもいいのだろうと思います。
他の例を考えてみます。
授業中に振り向いておしゃべりがしたくなる生徒がいたとして、どのような環境調整が考えられるでしょう。
よくある方法に、教師のすぐ近くの席にするというものがあります。
教師の目を行き届きやすくし、「振り向く」「おしゃべりをする」行動を抑制しようという意図です。
ですが、それで行動は抑制されず、かえって、「何度も注意する・注意される」という時間を生み出す結果になることもあります。
この例では、この生徒は、前方の右端の席になりました。
この生徒は、教室のみんなが、どんなことを考えているのかに興味も持ち、いつも気になってしまう生徒でした。
右前方から、少し斜めに座ることで、みんなの様子が把握しやすくなり、発言のタイミングを図ることができました。
先生は、すべての発言を抑制するのではなく、ポイントを押さえたいいタイミングでの発言を拾い、クラスの理解深化に活用しました。
環境調整で一番大事なことは、どういうやり方や場所が「環境調整」なのか、と How toの発想で考えるのではなく、子どもの特性やニーズを把握し、本当にその子に合った調整になっているのかどうかをしっかりと見ていくことです。
こうした調整を行うには、学校の先生方と保護者、なにより本人との関係性の構築が必要になってくるでしょう。
これはまた別の問題として考えなくてはいけないのですが、「ちょっとした工夫でいいんだ」と、構えすぎず前向きに捉えてくださる先生方もいると思います。
「環境調整してください」と言うと、「わあ、大変だ」と思われてしまうこともあると思うので、「具体的な困りごとを具体的に解決する工夫を、一緒に考えてください」という相談の仕方がいいのではないかなと思います。